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「ゲームセンターなんて久しぶりに来たなぁ」


 稜市は2人セットで「たまごちゃん」と名付けた少女達と、それぞれ手を繋ぎながらそうこぼす。
 蘭桜、蘭朴を預かって2日目。昨日は、ゲームに熱中したり、近所を散歩したり、公園で遊んだり、ひたすらに稜市の体力を消費した。


「わーい! ねぇ稜ちゃん、おかしのやつやりたい! おかしのやつ!」

「かわいいぬいぐるみが、いっぱい……稜くん、あの子、とってほしいな……」

「はーい。順番にね~、順番に」


 ゲーム台へ駆け寄りそうになった蘭桜を引き留め、稜市はまず、我慢が苦手な女の子の希望を叶えることにした。
 3回までと約束してお金を渡すと、稜市と蘭朴が応援する中、蘭桜は「わーん!」と見事に撃沈する。


「もう1回~! ねぇ稜ちゃん、もう1回やらせて~!」

「だーめ。おじさんが取ってあげるから、それで我慢してね」


 ぐずり始めた蘭桜のおねだりをかわし、稜市はゲーム台に向き合った。
 1回目でお菓子を積み、2回目でぽとぽとっと個包装のお菓子を数個獲得すると、「はい」と蘭桜に手渡す。


「わぁ、稜ちゃんすごーい! ありがとう!」

「どういたしまして。それじゃあ、次はクレーンゲームに行こうか」

「うん……!」


 飛び跳ねて喜ぶ蘭桜と再び手を繋ぎ、嬉しそうに頬を緩める蘭朴指定のクレーンゲームへと、3人でのんびり向かう。
 そこに並んでいたのは、キャラクターもののぬいぐるみ達だ。


「さて、朴ちゃん。どの子がいいのかな?」

「あの子、ひよっぴー……」


 稜市は蘭朴が指さしたひよこのぬいぐるみを見ると、投入口にお金を入れた。
 それから、ボタンを押す。
 右にしばらく、奥に少し。そんな風にクレーンを動かすと、ひよこの頭ががっちりと掴まれて浮いた。
 元の位置に戻るまで、少し揺れながら移動したひよこのぬいぐるみは、ストンと出口に落ちて蘭朴の手で回収される。


「かわいい……稜くん、ありがとう……!」


 ひよこのぬいぐるみを見て、頬を緩めた蘭朴に見上げられた稜市は、「どういたしまして」とその頭を撫でた。
 それからも、あちこちに興味が向く2人の希望を叶えて、稜市は時にサクッと、時に苦戦しながらゲームに付き合ったのだった。


「そろそろ帰ろうか」

「えー、もう?」

「稜くん……さいごに、あれ……かわいい……」

「うん?」


 たっぷり遊んでも元気いっぱいな蘭桜の頭を撫でた稜市は、蘭朴が「あれ」と言ったものを見る。
 そこに佇んでいたのは、いわゆるプリクラと呼ばれるものだ。


「あ~……懐かしいなぁ。女の子に人気だったっけ」

「なにあれー? どんなゲーム?」

「あれはねぇ、写真を撮るものだよ。デコレーションするのが楽しいんだって」

「デコレーション……稜くん、やりたい……!」「分かった、じゃあ、あれで最後にしようね」


 稜市が頷くと、蘭朴は目をキラキラさせて、プリントシール機へ向かう。
 それに引っ張られる形で稜市と蘭桜も幕の中に入ると、アナウンスに従ってフレーム選びを始めた。


《撮影を始めるよ♪》

「ぴーす!」

「にー……」


 蘭桜は元気いっぱいに、蘭朴は控えめながらも生き生きとして笑う。
 稜市も「えぇと」と緩く笑って写真に写ると、再びアナウンスに従って加工スペースへ移動した。


「うわぁ、いっぱいあるねぇ……」

「かわいい……!」

「あはは、見て、これへんになるよ!」


 撮影時同様、否、撮影時以上の盛り上がりを見せて、3人は写真の加工に没頭する。
 出来上がったプリントシールは、3人の個性が合わさって賑やかな写真となった。