「ふんふんふ~ん♪」
街路灯に照らされた道を、上機嫌で歩く女性が1人。
控えめな鼻歌を風に乗せる彼女は、その手にエコバッグを持っていた。
「今日は久しぶりに卵が買えたわ。ストレートに目玉焼きにしましょうか、それとも生のまま卵かけご飯に……!?」
見たところ20代前半、それも美人な部類の女性であったが、「きゃ~!」と悶える様を見ると、近寄りたくはならないだろう。
独り言を呟いていた女性は、「卵黄と卵白を分けて~、……」と不意に言葉を止めて首を傾げた。
「あら? あの籠は……」
女性の視線の先には、電柱の下に並べて置かれた、2つの籠がある。
その籠の中に、おくるみに包まれた赤ん坊がいることに気付くと、女性はエコバッグを揺らさないよう、そっと電柱に近付いた。