一方、リリーアはフィオを部屋に上げて留学生として卒業まで居るとなったらどうするか話していた。
「フィオは孤児院で勉強してた?」
「うん、村で唯一教師やってる人が居たし、おばさまも出ていたから分からないことはない」
「良かった、やり方は違うけど追いつける?」
「翻訳無しだと厳しい、これのマイクに反応すれば文字起こしして訳してくれるけど今の席は遠くて拾えないかもしれない」
「レポートにフィオの事情書いて席を前の方にするようにしておくよ」
「ありがとう」
 訳あってここに住んでいるリリーアとは違い、隠れながら生活を送るオルディア人でもない本当の純粋なオルディア人であるフィオをサポートして一緒に卒業しようと考えている。
 オルディア人なら必ず持ってるホログラムフォンは見た目以上に多機能である、リリーアが居ないと不安だがこれを失くさなければ生活に支障来たすことはない。
 席替えは個人の申告があれば変えられる、友人のカリンは背が低いとあって先に前の席にしてもらっている、リリーアがレポートにそれを書けば担任が朝に変更して問題無いか聞き決める形になる。
 ノートPCでレポートを書いているとフィオが覗き込んだ、何もかもが最新鋭のオルディア大陸では違うのかもしれない。
「こっちではホログラムじゃないか……」
「PCまでホログラムって……」
「これがあればどこでもネットが出来る」
 そう言ってバッグから細長い棒を出してデスクに置いて電源ボタンを押すとホログラムのキーボードとモニターが現れた。
「なにそれ!? 凄い! オルディアの人って皆これ持っているの!?」
「無いと出来ないこともある、これでもスペックはそれより高い」
「いくらするの?」
「んー、多分七千オルズ」
「高いの? 安いの?」
「安いほう」
「うへぇ」
 リリーアのノートPCよりも性能が高くしかも安い、持ち運びしやすい上にバッテリーは無限なのか電源コードが無いのが魅力的だ。
 フィオは手早くキーを打ち込んでオルヴィス村の孤児院に繋いだ、すると友人なのか「フィオちゃん、暑くない?」とカメラが捉えていてフィオは「暑すぎる、戻りたい」と音を上げてしまった。
「孤児院の皆、私のこと知っているのかな?」
「知ってる、事件が起こった時にアヴローラが事情を話してたから」
「今の私見て分かるのかな?」
「光属性はリリーアしか居ない、封印を掛ける前の姿知っている子も居る」
「それは意外……」
 画面に映るフィオの友人に「リリーアです、知ってますか?」と言うと「アヴローラの娘さんだよね?」と言ったので「そだよ」と返すと「子供の時、一緒に居たの覚えてる?」と長丁場になりそうだったので「覚えてるよ、今レポート書いてるからまた後でね」と言ってフィオに変わった。
「レポート送信っと! 今日の仕事はおしまーい!」
「お疲れ様」
「お風呂! 行こっと」
「出会うまでこんな感じで過ごしてたのか?」
 着替えを出してはポンポンと制服を脱いで下着も脱いでシャワールームに入るリリーア、無造作に脱いだ服が散らかっているのを暑いのは分かるが真面目なのにオフになると一気に逆転して雑になると理解に戸惑った。
「フィオちゃん、王妃のことは心配しないで、リリーアちゃんと一緒に亡くなるまで生きれるって」
「そうか」
「戻ってきた時、またガトーショコラ作るから楽しみにしてて」
「うん」
 カメラは火属性の神子、友人が映っている、毎日お菓子作りに挑戦していて今日もリディアとレアに出すお菓子を作ったようだ。予言を外した時の激マズ茶を中和するためにレアは老体であっても味覚から消したいと一気に食べるくらいだ、味は甘党とあって濃い目なものの甘すぎるというライン一歩前くらいの絶妙な匙加減で作れる、孤児院でお茶の時間には彼女が作ったお菓子が毎日出てくる、いつ身を捧げるか分からない状態に立たされているフィオはほんの少しの安心感を得るものだ。
 シャワールームから「うわぁ……! シャンプー切れたぁ……!」とリリーアの情けない声が響いてくる。ガラッとドアを開いて素っ裸で詰め替えを棚から出して戻った、予想以上にやりたい放題、孤児院だとシャンプーは備え付けなのでこんな事態になることは少ないが安アパートのような寮だと見られなければ良いと気が緩むのかもしれない。
「……意外とプリケツ」
「えっ? 私のこと?」
「何でもない」
「そう……」
 ガレノス司祭と剣術を学んでいたとあって体が引き締まっているのがパッと見で分かる、腕相撲したら腕を折られそうなくらい筋肉質だ、あの戦いでリリーアが本気出したら死んでいたかもしれないと七大天珠で良かったとフィオは少し身震いした。親が大暴れして競技場から出禁になるくらいの力、遺伝してあの体格であるとなれば何となく納得してしまうのだ。