冷房が入っている教室から出ると夏の暑さが一気に襲い掛かる、廊下に居る生徒は数数えるほど、異常気象ではないが教室棟が密集しているためヒートアイランド現象が自然に発生してしまう。
 暑いのが弱点であるリリーア、極寒の大陸であるオルディア大陸生まれで体質と遺伝上、春の暖かさが限界点でそれ以上行ってしまうとすぐに熱中症になってしまう、その点はちゃんと対策しており塩タブレットと水はバッグに入れているのでバタンと倒れたことは今まで無い。
 エレベーターホールでボタンを押して三台の内どれかが止まるのを待つ、暑さからかすっからかんであったおかげもありエレベーターが早く到着して一階へと降りる。
「そう言えば、フィオはどうした?」
「あっ……」
 夏休みが終わる前に学園からオルディア大陸の留学生として入ってきた本当の幼馴染であるフィオーレ・ラズリットが居ない、暑いから出ないでと伝えたのだが気配すらない、うっかり置いてきてしまったのかとスマホで「どこにいるの?」と送ったら「寮に居る」と即答した。
「暑いから寮に戻ったみたい」
「ここに来た時、いきなりぶっ倒れて大騒ぎになったせいか……」
「多分、ちょっとしたトラウマになってるかも」
 フィオが学園都市のある一番街へ来た時にオルディア人からすると地獄の暑さとあってゼェゼェと息を荒くしていた、留学生と認定されて自己紹介を終わった直後にバタンと倒れてしまったせいで長居したくないのも頷ける。
 昇降口から出て第二食堂へと向かう、食堂は第五まであるがメニューは全部一緒なのでどこの食堂が美味いということはない、指定委託業者であるため統一されているのは仕方ないことや食堂そのものの位置が離れているのもあり食べ比べは難しいと言った感じ、うっかり超薄味のスープが出てきた時はヴィットーリアが大暴れすることから委託業者はひたすら頭を下げることもある。
 照り返しが痛いほどだが食堂に入るとエアカーテンで冷暖房を無駄にしないようにしているおかげでひんやりとしている。
 食堂はいつでも開いてるわけではなく時間が決まっており昼休みと通常の帰宅時間と部活動での帰宅時間帯に合わせている、時間ギリギリだと業者が料理は出せないと言われてしまうこともある、一年生は部活動に入れないため影響はないが二年生になると響いてくる、特に役職がある生徒は仕事より飯が先にしないと空腹のまま帰ることになってしまうのだ。
 時間は丁度昼休み、今日のメニューを見て何にするか各個人で決め席を取って談笑しながら食事していった。
 
 ◆◆◆

 用事は特に無かったためブレンは寮へと戻った。リリーアは明日からの授業とレポートを準備している、クラス内でも一位の好成績を連発するには前向きにならないと出来ない事かもしれない。
 リリーアはあの旅から「高校卒業するまでここに居る」と言っていた、離れ離れになっていた両親はその事情は分かりきっていて過干渉はしなかった。
 自分に何が出来るか、誰も邪魔せず高校卒業してオルディア大陸の世界樹に身体を捧げるなら出来るかもしれない。
 そろそろ文化祭が始まる頃だ、始業式では予告だけだったがこれからリリーアはさらに忙しくなる、出し物を決めてスケジュール通りの作業になってるかチェックして無事に開催まで管理をするとハードワークになるからいつものように手伝って上げることにしたのだ。
 SNSでリリーアに連絡を入れる、大したことじゃないけど頼ってほしいと言う文言で送った。
 モテ男子じゃないけど周りの女子から頼られている、特に銃を合法的に所持していることが強く、ストーカー行為してくるのが怖いからと一緒に寮に戻ったり長いと循環線で別の区域まで行くこともある。
 今は旅のこともあって大きな行動に移せない、メディアが取り上げ続けているせいで学園内から気軽に出られない。
 これには父親は頭に来てメディアどころか放送局に「息子達をオモチャにするな!」と部下達、軍事用語では分隊を引き連れて止めさせた程だ。
 すると、リリーアから返答があった、「手伝ってくれてありがと!」って返ってきた。
 髪色どころか目の色まで真っ白に変わってしまったリリーアは外見がどうだろうと挫けず真っ直ぐなところは変わりなかった、むしろ無垢の白い髪が魅力的でどうしたらそんなに綺麗な髪になるのかと女子が詰め寄ってくることもある、それでも対立せず見事に躱しているので不安になることは無いと思った。
 そんなこんな嫌な汗を流すためにシャワールームに入って洗い流す、リリーアからこれと言った事件に遭ってないだけ平和だと思ったのだ。