リューセイ達は、イシスをムッとにらみ付ける。そう体格のいい男が四人のことを、『あんなお供』と言ったからだ。

 「なぁなんで俺たちが、イシスの付き人なんだ!?」

 メラメラと怒りのオーラを全身にまとい、アベルディオは顔を引きつらせイシスをにらみ付けている。

 「それならまだマシだ。あの男は俺たちを、あんなお供って言ったんだぞ!」

 クライスもまた怒りをあらわにしていた。

 (なんでイシスの家来なんだ!? あークソッ! なんか悔しい。確かにアイツは、俺たちなんかより上品だが)

 そう思いリューセイは、ムッとした面持ちになる。

 「ふ〜ん。僕がイシスのねぇ」

 そう言いユリエスは、いつになく嫌な顔をし半目でイシスに視線を向けていた。

 そんな四人の鋭い視線を浴びイシスは、ここでちゃんと説明しないとあとで何をされるか分からないと思い、自分に気合を入れ話しだす。

 「先程も言いましたが、そんな高貴な生まれではありません。それにアベルディオよりも身分が上だと思われては、みんなに怒られてしまいます」

 イシスはそう答えると、アベルディオのほうをチラッとみる。

 それを聞いたアベルディオは、一時的に気持ちが落ち着いた。だがイシスが、なんでそんな事を言ったのかと首をかしげる。

 またリューセイ達も、イシスの意図が分からず考え込んだ。

 片や体格のいい男は、それを聞き四人へと視線を向ける。

 「ちょっと待て!? まさか! もっと高貴なお方が、あの中にいるっていうのか?」

 体格のいい男は驚き、リューセイ達のほうをみた。そして、誰がアベルディオなのかと探しみる。

 イシスが何をしたいのか分かり、どう対処したらいいのかと思考を巡らせた。

 (どうしたらいい? 素直に本当の性を名乗れば、おそらく国に通報され家に連れ戻されかねない。
 だがこのままでは、いつまでたっても話が先に進まないだろう。んー何かいい方法でもあればなぁ)

 そう思っていると、その男がリューセイ達のほうへと歩みよる。

 「んー、」

 そして四人を順に見まわした。

 「この中にいるとすれば。そうだなぁ」

 体格のいい男は、ユリエスのそばまでくるとじーっとみる。

 「意外におまえが、」

 そう体格のいい男が言いかけた。

 「ううん。僕じゃないよ」

 するとユリエスは、首を思いっきり横に振りアベルディオを指さす。

 一瞬アベルディオは、指を差され驚きユリエスをみる。

 「ユリエス!? ……はぁ、まぁいいかぁ。俺がアベルディオですが」

 そうアベルディオが言うと体格のいい男は、んーと考えたあと口を開いた。

 「なるほど。確かに、賢そうな顔をしている。だがそうだとして。どこの国の貴族様で?」

 そう言いその男は、アベルディオを疑いの目でみる。

 アベルディオは、不機嫌な顔をした。そうその男の態度が、イシスと自分とでは明らかに違っていたからだ。

 (いったい何を考えている? それに、明らかに俺に対する態度がやけに素っ気ない。
 まぁ、ここで食ってかかっても仕方がないし)

 そう思うと軽く深呼吸をし気持ちを落ち着かせる。

 「……。ふぅ、どこの貴族ですかぁ、か。そうだな。教えてもいいのですが。ただ、おそらく言っても、分からないと思いますよ。小さな国ですのでね」

 「なるほどな。まぁいい。だが貴族の坊ちゃんが。なんで、冒険者のまね事なんかしている?」

 「確かに、そう思われても仕方がないのだろう。だが申し訳ないが、その理由を教える事はできない」

 アベルディオは、堂々とそう言い切った。すると体格のいい男は、ニヤリと笑みを浮かべたあと、わっはっはと急に豪快に笑いだす。

 「コリャ、思ったより度胸があるみてえだな。それに五人ともに、ってところか。まぁいい、なんか事情があるんだろうからな」

 「まさかとは思うが。俺たちを試したんですか?」

 アベルディオは小首をかしげ、そう問いかける。

 「ああ、そんなところだ。まぁ貴族だろうとなんだろうと、冒険者には違いねぇ。それにこれからも、それを隠し冒険者として旅を続けるつもりなんだろ?」

 そう言われリューセイ達はうなずいた。

 「って事は、冒険者登録をするんだよな?」

 「もともと、そのつもりです」

 アベルディオがそう言うと体格のいい男は、リューセイ達を見まわしたあと、「着いてこい」と言い受付のカウンターへと歩きだす。

 リューセイ達は、体格のいい男が何をしたいのかと疑問に思ったが、
 これ以上余計おかしな事になるのも面倒だったのでそのあとを黙って着いていった。

 (何をしたいんだ? それにこの男は何者だ)

 そうリューセイは思いながら、みんなのあとを追いかけたのだった。