そのころユリエスは__
__ここは願望の宝玉が創りユリエスが願い思い描く世界。
なぜかユリエスは屋敷の自分の部屋にいた。
部屋の中はキレイに整えられ、机上に書類や本などが置かれている。
ユリエスは、なんで自分の部屋にいるのか不思議に思い考えた。そして、歩きだし周囲をキョロキョロしながら室内を見渡してみる。
(えっと。ここって僕の部屋だよね? だけど、なんでぬいぐるみが一つもないのかなぁ。まぁ、ない方がいいけどね)
机のそばまでくると、置いてある書類が気になり手にした。
(この書類って。確か姉さんが、忙しい父様の代わりにやってたはず。なんで僕の机の上に……。それに、どうしてこんなに山積みになってるんだろう?)
そう思い悩んでいると、扉をノックし白髪の男性が部屋に入ってくる。そして、そばまでくるとユリエスに一礼をした。
この男性はこの屋敷の執事でターバスという。
「ユリエス様。そろそろ着替えをなされませ。ハルジオン公爵邸のパーティーに遅れてしまいます」
そう言われユリエスはターバスの方をみる。
「えっと、ターバス。パーティーって? それに、なんで僕の部屋がこんなに変わってるのかな」
「何を言っておられるのです。今日はアベルディオ様の婚約披露パーティー。それと部屋が変わっていると言われましたが--」
そう言いターバスは、なぜ部屋の雰囲気が変わっているのかを説明した。
「えっ!? それって本当なの? でもまさか、あの姉さんが」
ガクッと肩を落としユリエスは、そのまま項垂れ床に座り込んだ。
(どういう事? 病気なんてした事がなかった姉さんが。だけど、なんでそんな大切な事を忘れてるんだ?)
なんで姉のリリアが亡くなった事を覚えていないのかと疑問に思った。
「どうされました。お気持ちはわかります。ですが。これからユリエス様がこの屋敷の次期当主として社交の場に、」
「ああ。分かってるよ。だけど、」
(だけど、急すぎる。でも、急じゃないんだよな。ただ僕が覚えてないだ、け……!?)
そう思い納得しようとする。だが、よく考えてみると矛盾していることに気づく。
(そういえば。そもそも、なんで家に戻って来てるのかな? さっきまで、洞窟にいたと思ったんだけど。
それに、どう考えても変。これって現実じゃない気がする。
……確かに、僕が姉さんの代わりにって思った時もある。でも、それはあくまで姉さんが大変そうだったからだし。こんなの僕は望んでない!)
そうユリエスが思うと、この世界の空間のどこかで微かに亀裂が入った。
『これはどういう事!? 気づくのが早すぎます。いえ、その前にこれはあの者の望み--ですが、まだ手はあるはず』
すると謎の声は、ターバスにある行動をするように指示する。
「まさかとは思いますが、アベルディオ様に先を越されすねているのでは?」
「す、すねてなんかない!」
そう言われユリエスは、なぜか動揺してしまった。
「はぁ、その様子だと図星ですね。ですが、ユリエス様も明日お見合いをされる予定になっております」
「僕が見合い。誰と?」
そう言われユリエスは聞きかえす。
「リビア・セルティール様です。その様子では、やはり忘れておられたようですね。この前、御当主様がお話をされていたはずですが」
「ちょっと待って!? 僕がリビアと?」
驚きユリエスは、ターバスの腕を右手でつかんだ。そして、顔を赤らめながら左手で胸をおさえる。
そうユリエスは、ずっとリビアの事が好きで遠くからみていたのだ。
(リビアと見合いをする。この僕が……。でも、これは現実じゃない。それは分かっている。だけど、)
そう思いユリエスは自問自答している。だがこれは……。
『さぁ思い悩まず心の赴くままに、その望みを叶えるのです』
「ユリエス様。何を悩んでおられるのですか。既に決められた事ですので」
「うん、そのぐらい分かってる。だけどそれは、これが現実だった場合だよね」
そう言いユリエスは、いつになく真剣な表情でターバスを睨みみる。
「これは驚きました。ユリエス様がそのような表情をされるとは。ですが、現実ではないとはどういう事でしょう?」
「そのままの意味だよ。確かにリビアの事が、今でも好きだ! だけど僕は一度、昔フラれている。それなのに、リビアが会ってくれるわけない!」
__そうリビアとは、同級生で好きだった女性だ。
黒髪の二箇所で纏めた三つ編みで可愛らしい雰囲気。そして、頭がよく成績は女子の中でも上位の方である。
ユリエスは、いつも遠くからリビアをみていた。そんなある日の事リビアに告白をするも、既に婚約者がいて見事にフラれたのだ。__
「……」
そう言われターバスは、何も言えなくなり目が泳ぎ始める、それと同時にこの世界が崩れだす。
(やっぱりそうだったんだ! もしかしたら、僕がリビアの事を思えばそうなるような気がした。だから、わざと考えたんだけどね。クスッ、)
ユリエスはそう思っただけじゃなかった。もしかしたら、問い詰めれば夢から覚めると思いそう言ったのだ。
__だが実際は、願望の宝玉が創り出した世界だったのだが。まぁそこは、結果オーライという事で__
『まさか、わざとだと!? クウッ、してやられました。なんとズル賢い者なのでしょう。このままこの空間ごと始末を、』
「ゴゴゴゴゴォー」と音がして、この世界がさらに崩れ始める。
『ですが、今の状態を保つのは困難。仕方がありません。ここは、撤退した方がよさそうですね』
そう言いその謎の声は消えた。
「あっ! パーティーだけでも、出ておけばよかったかなぁ。美味しい物が食べられたかも。でも、まぁいっか」
そしてその後ユリエスは、早く目が覚めないのかと思いながら待っていたのだった。
__ここは願望の宝玉が創りユリエスが願い思い描く世界。
なぜかユリエスは屋敷の自分の部屋にいた。
部屋の中はキレイに整えられ、机上に書類や本などが置かれている。
ユリエスは、なんで自分の部屋にいるのか不思議に思い考えた。そして、歩きだし周囲をキョロキョロしながら室内を見渡してみる。
(えっと。ここって僕の部屋だよね? だけど、なんでぬいぐるみが一つもないのかなぁ。まぁ、ない方がいいけどね)
机のそばまでくると、置いてある書類が気になり手にした。
(この書類って。確か姉さんが、忙しい父様の代わりにやってたはず。なんで僕の机の上に……。それに、どうしてこんなに山積みになってるんだろう?)
そう思い悩んでいると、扉をノックし白髪の男性が部屋に入ってくる。そして、そばまでくるとユリエスに一礼をした。
この男性はこの屋敷の執事でターバスという。
「ユリエス様。そろそろ着替えをなされませ。ハルジオン公爵邸のパーティーに遅れてしまいます」
そう言われユリエスはターバスの方をみる。
「えっと、ターバス。パーティーって? それに、なんで僕の部屋がこんなに変わってるのかな」
「何を言っておられるのです。今日はアベルディオ様の婚約披露パーティー。それと部屋が変わっていると言われましたが--」
そう言いターバスは、なぜ部屋の雰囲気が変わっているのかを説明した。
「えっ!? それって本当なの? でもまさか、あの姉さんが」
ガクッと肩を落としユリエスは、そのまま項垂れ床に座り込んだ。
(どういう事? 病気なんてした事がなかった姉さんが。だけど、なんでそんな大切な事を忘れてるんだ?)
なんで姉のリリアが亡くなった事を覚えていないのかと疑問に思った。
「どうされました。お気持ちはわかります。ですが。これからユリエス様がこの屋敷の次期当主として社交の場に、」
「ああ。分かってるよ。だけど、」
(だけど、急すぎる。でも、急じゃないんだよな。ただ僕が覚えてないだ、け……!?)
そう思い納得しようとする。だが、よく考えてみると矛盾していることに気づく。
(そういえば。そもそも、なんで家に戻って来てるのかな? さっきまで、洞窟にいたと思ったんだけど。
それに、どう考えても変。これって現実じゃない気がする。
……確かに、僕が姉さんの代わりにって思った時もある。でも、それはあくまで姉さんが大変そうだったからだし。こんなの僕は望んでない!)
そうユリエスが思うと、この世界の空間のどこかで微かに亀裂が入った。
『これはどういう事!? 気づくのが早すぎます。いえ、その前にこれはあの者の望み--ですが、まだ手はあるはず』
すると謎の声は、ターバスにある行動をするように指示する。
「まさかとは思いますが、アベルディオ様に先を越されすねているのでは?」
「す、すねてなんかない!」
そう言われユリエスは、なぜか動揺してしまった。
「はぁ、その様子だと図星ですね。ですが、ユリエス様も明日お見合いをされる予定になっております」
「僕が見合い。誰と?」
そう言われユリエスは聞きかえす。
「リビア・セルティール様です。その様子では、やはり忘れておられたようですね。この前、御当主様がお話をされていたはずですが」
「ちょっと待って!? 僕がリビアと?」
驚きユリエスは、ターバスの腕を右手でつかんだ。そして、顔を赤らめながら左手で胸をおさえる。
そうユリエスは、ずっとリビアの事が好きで遠くからみていたのだ。
(リビアと見合いをする。この僕が……。でも、これは現実じゃない。それは分かっている。だけど、)
そう思いユリエスは自問自答している。だがこれは……。
『さぁ思い悩まず心の赴くままに、その望みを叶えるのです』
「ユリエス様。何を悩んでおられるのですか。既に決められた事ですので」
「うん、そのぐらい分かってる。だけどそれは、これが現実だった場合だよね」
そう言いユリエスは、いつになく真剣な表情でターバスを睨みみる。
「これは驚きました。ユリエス様がそのような表情をされるとは。ですが、現実ではないとはどういう事でしょう?」
「そのままの意味だよ。確かにリビアの事が、今でも好きだ! だけど僕は一度、昔フラれている。それなのに、リビアが会ってくれるわけない!」
__そうリビアとは、同級生で好きだった女性だ。
黒髪の二箇所で纏めた三つ編みで可愛らしい雰囲気。そして、頭がよく成績は女子の中でも上位の方である。
ユリエスは、いつも遠くからリビアをみていた。そんなある日の事リビアに告白をするも、既に婚約者がいて見事にフラれたのだ。__
「……」
そう言われターバスは、何も言えなくなり目が泳ぎ始める、それと同時にこの世界が崩れだす。
(やっぱりそうだったんだ! もしかしたら、僕がリビアの事を思えばそうなるような気がした。だから、わざと考えたんだけどね。クスッ、)
ユリエスはそう思っただけじゃなかった。もしかしたら、問い詰めれば夢から覚めると思いそう言ったのだ。
__だが実際は、願望の宝玉が創り出した世界だったのだが。まぁそこは、結果オーライという事で__
『まさか、わざとだと!? クウッ、してやられました。なんとズル賢い者なのでしょう。このままこの空間ごと始末を、』
「ゴゴゴゴゴォー」と音がして、この世界がさらに崩れ始める。
『ですが、今の状態を保つのは困難。仕方がありません。ここは、撤退した方がよさそうですね』
そう言いその謎の声は消えた。
「あっ! パーティーだけでも、出ておけばよかったかなぁ。美味しい物が食べられたかも。でも、まぁいっか」
そしてその後ユリエスは、早く目が覚めないのかと思いながら待っていたのだった。