「は、はい……ありがとうございます、詩さん……」
「何かございましたか?」
「、い、いえ……」
否定した琴理から何かを感じたのか、詩はそれ以上訊いてこなかった。車に乗せられ、学校を離れる。
その間、琴理はずっと考えていた。
(淋里様がクマのことを知っておられた……? そういえば、あのときは何も言われませんでしたが、クマと会話しているところに淋里様が現れたのでした……。それで? でもなんで淋里様は祓えるのでしょう……内緒にする理由もわかりません。わかりませんが――)
ぞくり、と背筋が冷えた。
(これは……本当に誰にも言えないかもしれません……)
心護にも、詩にも、涙子にも。
話したら――と言ったときの淋里のかおが。
人の姿をとって醜悪にゆがんだクマと、似ていて。