最強退鬼師の寵愛花嫁


涙子に護身術を学ぶようになってから、詩の勧めでわずかだが瞑想の時間を取っている。

精神統一することで自分の状態に目を向けていられるように、と。

そのおかげか、琴理の影にクマがいるときと、琴理たちが食事中でクマがいないときに違いがあることをわかってきた。

今はその、クマの気配がない。

クマは以前から、宮旭日以外の人間がいる場所では影から出てきたり琴理をからかったりをしない。

何かしらの信条があるのだろうか。

クマに解答を求めると反対に要求されるものが多いので、琴理は自分からクマに質問することは控えていた。

(わたしから離れた……? いえ、それにしては『ただいないだけ』という感じでしょうか……)

――今、琴理が考えるべきことはたくさんある。

その中でクマのことを優先する必要は――

(ないですね。まあ何と言うか、わたしがクマ呼び出した理由を父様たちに知られてもわたし、ノーダメな気がしますし)

ノーダメージと思えるくらいに、琴理の心が強くなっていた。

琴理は無自覚だったが、心のどこかが強くなっていた。

(烈火のごとく怒らせてしまうだろうことは申し訳ないですが……今は私が死を選んだ先が『見えて』います。その先を私は、絶対に現実化したくない)

姉の命と引き換えに自分が生き永らえたと知ったら、妹は確実に姉が向かった先へと追ってしまうだろう。

琴理が命を喪うことは、イコール愛理も命を喪うことだ。

すれ違っていた心護の心が向いている先が自分だと知ってその愛情を受けて、優しく温かく厳しい離れの人たちと過ごして、琴理の見ている世界は確実に広がっていた。