父は膝の上の両こぶしを握って、心護と淋里を見る。
「心護様をないがしろにしたり、軽視しているわけではありません。娘を心護様の許嫁にすることに迷いがあったのは確かですが、琴理自身心護様をお支えする立場であるための向上心があったので、私たちも琴理を助けていこうと思っておりました。……ですが、琴理と妻の命を救ってくださった恩義を……捨てることも出来ませんでした」
父の辛さをにじませる声に、琴理は胸の前で手を握った。
母と自分の命が淋里の手によって救われていた事実を、琴理も軽視するわけにはいかない。
母や父が淋里を裏切れない気持ちも理解できないものではない。
琴理が思考のため黙っている間に、心護が淋里を見た。
「淋里兄さん、普段から何やってるんですか?」
「え? 暇つぶし」
やはりあっさりと答える淋里。
父が、ふっと息を吐いた。
「淋里様にとってはそうでしょう。ですが、命を救っていただいた方をないがしろには出来ません。そういうことです」
「………」
淋里を支持する者がいる理由を花薗の父から説明を受け、淋里はスローモーションで頭を抱えた。
え~とか、あ~とかうなっている。
淋里にとってそれは本当に何気なくやっていたことのようだけど、かなり重い部類の話だ。
命を助けるということの重さ。
そしてそれをやってのける淋里の技量。
淋里は両手で顔を覆った。
「あーもう、権力を望まない奴が力持っちゃうとこうだよダメだよの見本なんだよ僕。そもそも花園、僕に琴理ちゃん嫁がせるとか絶対やっちゃダメなことだからな? 心護を敵に回すとかそういうことじゃなくて、琴理ちゃんのために。僕、性格激ヤバだって自覚してるくらいだからね?」



