私は、岳のことが好き。

 この感情を今まで否定したがったのはどうしてかというと、ただ単純に怖かった。いつか岳に飽きられてしまうのが、そのうちフラれてしまうのが。だからずっと、弟だ空気だって、自分に言い聞かせてきた。
 恋愛と友情を天秤にかけた時、下へと傾くのは友情だと私は思っている。中学時代から付き合い晴れて結婚ゴールインなど、ドラマや映画でだってそんなに見た記憶がない。結局恋愛感情など儚く脆い。友情の方が長く続く。だから私は、岳と恋仲になるのをずっと避けていた。

 岳が好きだけれど、岳とは付き合いたくない。そんな矛盾した想いはずっと私の中で燻って煙を立たせていたけれど。

「も〜……」

 どうやらそろそろ、紅い炎がぽっと灯されそうだ。