驚くことに、それからの岳は二週間窓を開けなかった。何度名前を呼んだって、何度小石を投げたって、岳は私を無視し続ける。

「な、なんてしぶとい奴……」

 混乱する、頭の中。そして悔しいことに──

「岳のばか……」

 彼の策略にはまったのか、心底逢いたくなってしまった。

「なんか最近の関川(せきかわ)さん、元気ないね」

 特別仲の良くもないクラスメートにそう言われ、私は喫驚した。

「え、わ、私……?」
「なにか辛いことでもあったの?身内の不幸とか」
「いや、全然そんなんないけど……」
「じゃあ、どうしてそんなにも暗い顔してるの?まるで、大好きな人が死んじゃったみたい」

 コンクリートだけを眺め、行く家路。

 大好きな人大好きな人大好きな人。

 もし私にそんな人がいるならば、この状況で考えられるのはひとりしかいない。

「あ〜、認めたくなかった……」