「これから、ビスクスの歴史についての授業を始めます。質問がある際は手を挙げて仰ってください。」
家庭教師は笑顔で小さな生徒に語り始めた。
その昔、女神ケルトは世界に色をもたらした。鏡に三原色を剣に白黒を宿し、人界へ送った。人々は大いに喜び生活は豊かになり、どんどん発展していった。当時の王と王弟であった鏡と剣の守り人も国が豊かになり、神に感謝していた。感謝の印に2人は神殿を建て、国全体で神を崇めることにした。だが、平和な世はそう長くは続かなかった。神殿の管理者である教皇は権力に目がくらみ王弟を虚偽の神託でたぶらかし、国全体を巻き込んだ戦争を引き起こした。守り人の役目を放棄し、国の平和を壊したことに神は激怒。王と王弟の間に大きな土壁が現れ、そのまま世界は2つの国に別れてしまった。王は三原色の鏡を納めるシャムロックを王弟は黒白の剣を納めるビスクスを統べることになった。シャムロックは色の世界、ビスクスは色無き世界となった。
「はい!はい!」
小さな生徒は勢いよく手を挙げ、家庭教師に質問した。
「じゃあ、あのおっきな壁の向こうには"色"があるのですか?」
「そうなりますね。」
家庭教師は笑顔で答え、さらにこう付け加えた。
「殿下は特別な、色をお持ちのお方ですからもしかすると、いつかシャムロックへ行けるかも知れませんね。」
その言葉に生徒はより一層笑顔になった。その瞳は希望に満ち溢れていた。
「いつか行ってみたいなぁ」