「…言ってはないけど、好きな人ができたから別れたいって言ってきたの。その日にちょうど玲奈さんと京平が二人で歩いてたの見たし、そんな時に好きな人ができたから別れたいって言われて、絶対そうだと思って…」



そこで玲奈さんはなぜかはあと大きくため息をついた。



「それで、好きな人が誰なのかちゃんと確認もしないで別れたんだ?ありえない。京平のこと信じてたらそんなのできないと思うけど」


「は…?何それ?私は京平のこと信じてたよ。きっと何かの間違いだって思ってたけど、でも京平が好きな人ができたって言うから…」



玲奈さんが突然、グラスに入った水を思いっきりこっちに向けてぶっかけてきた。


ドラマの中でしか見たことのないその行動に、思わずぽかーんと口を開けて固まる。



「だからそれが嘘だって言ってんの!そんなのも気づかないわけ!?あなた、京平の彼女だったんでしょ?好きだったんでしょ?なら京平がどんな思いでそんなことを言ったかくらい、わかりなよ!」


「え…?」



玲奈さんは鞄を引ったくるように掴むと、怒ったようにお店を出て行った。


冷えた頭で考えてみるけど、やっぱり何一つわかることなんてなかった。