ちゃんとやりなよ、と一度言ったことがあるけど「汗かきたくなーい」とか適当な理由で京平がヘラヘラと笑っていたことを思い出す。



「ああ、なんかそれは桐谷っぽいわ。適当に生きてるのに許されるのが桐谷京平だよねー。本当、なんも悩みとかなさそうな顔してるもん」


「あはは、それはちょっとわかる」



麻由の言葉に同意しながら、次は投げキッスをしている京平に冷たい視線を送っといた。



結局五十メートル走の結果はビリと想定内の順位で終わり、午前の部が終了した。



「杏奈お昼どうすんの?桐谷と?」


「うん。一緒に食べないとまたいじけてめんどくさいから、行ってくるね」



そう返している間にもポケットに入れていたスマホが何度も振動して、早くしろと催促される。


三人に手を振ってわかれ、何件も来ている着信にはあとため息をつきながら、こっちからかけるとワンコールで京平が出た。



「杏奈おっそいよー。俺は早く杏奈に会いたいの!」


「わかったから。ちょっと待ってよ。私だって用具の片付けとかしてたんだから」