同じく五十メートル走に出場で後ろに並んでいた麻由があははと豪快に笑った。



「あんなの恥ずかしいだけだよ」


「そんなこと言って、顔にやけてるよ」


「え！？」


「うっそー。あはは、杏奈も可愛いやつだよね。私が男だったら間違いなく惚れてる」


「やめてよもう…」



顔を背けながら両手で頰を覆い隠す。


素直に愛情を向けられるのは、むず痒いけど嬉しい。それがバレるのは恥ずかしくて死にたくなるけど。



「桐谷のことだから杏奈と同じ五十メートル走出るのかと思ったのに。てかリレーとかに出そうなタイプなのに、やる気のない借り人競争ってなんか意外だね」



麻由がこちらに向かってまだぶんぶんと手を振っている京平に苦笑しながら、ふと思い出したように言った。



「んー京平って、多分運動できるんだろうけどめんどくさがってやらないんだよね。体育とかもよくサボってるし」