「多分それは…」


「杏奈ちゃん」



遮るようにして名前を呼ばれ振り向くと、扉に寄りかかるようにして桐谷が立っていた。



「帰ろ」


「え、ちょ…」



鞄と手を取られ、あっという間に廊下に連れ出される。



「ちょっと待ってよ、まだ日直途中なんだけど」


「…そんなにあの男と一緒にいたいの?」


「…は?」



靴箱まで来てやっと桐谷が立ち止まった。


握られていた手に、グッと力が込められる。