「そんなこと言って、どっかの女に取られたって知らないんだからね？桐谷くんが杏奈のこと好きって言ってくれてる今のうちに杏奈も早く素直にならないと」


「別にいいよ、あいつに彼女ができようが私には関係ないし」



どうでもいい。勝手に作ればいい。


そう頭では考えるのに、なぜか胸が少しだけ痛んだ気がした。


＊


それから二ヶ月間、桐谷は毎日好きとは言ってこなくなったものの、何かと理由をつけて絡んできた。


最初は近寄るなと拒絶していたけど、あまりのしつこさに最近ではもう諦めている。



「あの、雪平さん。俺黒板消すね」



課題を出せと先生に呼ばれて桐谷が行った隙に帰ろうとすると、同じクラスの天野尊琉(あまのたける)が恐る恐るといった感じで話しかけてきた。


そこで今日自分が日直だったことを思い出す。



「あ、じゃあ私日誌書いとく」