「あ…っ」



とりあえず教室を出ようと歩き出すと、震えていた足がもつれ転びそうになる。


桐谷が咄嗟に支えてくれて、思わず突き飛ばそうとするけど体が動かなかった。



「ごめんね、怖かったよね」


「…違う怖くない」


「うん」



ぽんぽんと頭を撫でられ、じわりと涙が滲んできた。


嬉しかった。他でもない桐谷が助けに来てくれて。



「…最初はちょっと怖かったけど、あんたがバカで笑えてきて、どうってことなかった」


「え?何それどういうこと」



あははと笑う桐谷の声が耳元で聞こえて少しくすぐったかったけど、もう少しだけこのままがいいと思った。


桐谷の甘い柔軟剤の匂いが心地よかった。