「杏奈ちゃん、俺と付き合おう！」


「無理。キモい。あっち行って」



もう何日目かわからないこのやりとりに、はあとため息をつく。



「どうして！俺、杏奈ちゃんのために女の子の連絡先とか全部消したし、遊ぶのもやめたんだよ！あ、もしかしてこの茶髪ピアスがダメ！？チャラい！？ねえどうしたら付き合ってくれるのー！」


「だから付き合わないって言ってるでしょ」



なぜかぶっちーを紹介してもらったあの日から桐谷に気に入られてしまったみたいで、毎日のようにしつこく「付き合って」と言われる日々が続いていた。


どうせただの暇つぶしなんだろうけど、好きなんて言われ慣れていないからいつも顔が赤くならないようにこっちは必死だ。



それに桐谷がそんな簡単に女関係を断つとも思えないし、甘い嘘に騙されてはダメだ。



「杏奈ちゃん、一緒にかえ…」



桐谷に声をかけられる前に逃げるように教室を出る。


ああいうのにはなるべく関わらない方がいいに決まっている。