きっと桐谷はこういう言葉を日常茶飯事女子に囁いているんだから。勘違いしてはダメだ。



「あ、ぶっちー!」



突然桐谷が電信柱の隅っこでじっとうずくまっていた猫に向かって走っていった。



「見て見て、杏奈ちゃん!こいつよくこの時間にこの道通るといるんだよね。ぶち猫だから勝手にぶっちーって呼んでんの」



桐谷が指差した白と黒のぶち猫、ぶっちーが私をちらりと見て毛づくろいを始めた。



「ぶっちー京平だよー」


「…シャーッ!」



桐谷が抱き上げようとすると、その手に向かってぶっちーが爪で引っ掻いた。



「いってぇ!こいつ、たまに餌とかあげてんのに全然俺に懐いてくれないんだ」



ふんっとそっぽを向いているぶっちーの頭にそっと手を伸ばすと、ぶっちーは大人しく私の手に身を委ねてきた。