【短編】夏空よりも眩しいきみへ


団地のすぐ近くの小さなスーパー。
あの頃よりも、だいぶ寂れた気がする。

風の噂で、羽奈も中学の途中に引っ越したって聞いたから、もうここにはいないだろうけど。

何かを期待してしまう自分がいて恥ずかしい。

店内に入ると、冷房が強く効いていてものすごく涼しい。

汗が乾いていくような感じがして、店内を歩いていると、少し寒いと思えるぐらい。

俺は一目散に、アイス売り場に向かい、ショーケースを覗き込む。

懐かしいを探そうと、必死に。

「うわっ」

思わず小さく声が出る。

あった。

ショーケースの奥の端っこに、この中で1番安いアイスキャンディーが。

すぐ手にとってみるけれど、あの頃よりもアイスがちょっと小さくなった気がする。

俺がデカくなったから?

少ししんみりした気持ちになりながら会計を済ませ、急いで公園へと向かう。

目と鼻の先。

団地と階段で繋がっているそこは、ブランコとすべり台だけのシンプルな公園。

たしか、2つほどベンチがあったかも、と記憶を辿りながら向かっていると。

……え。

見えてきたベンチと、そこに座る一人の人。
先客がいた……。

大きく心臓が跳ねる。


なんで……。
嘘だろ。

幻覚?

そんなことを思いながら、バクバクと胸の鼓動が大きくなる。

まさか、と何度も自分に言い聞かせながら、一歩、また一歩と進むと。

それは、最近、教室で見慣れた後ろ姿だった。

夏になると、彼女が髪の毛を結ぶということはよく知っている。

ずっと見てきた。

懐かしいその場所で、昔よりも華奢に感じる肩と、うなじ、跳ねた毛先を見て息を呑む。

マジで言ってんの……。

どうしていいか分からず、突っ立っていると、ビュンと大きな風が吹いて、公園中の木々や草木が揺れて。

ゆっくりと、彼女が振り返った。

「えっ……あや、め?」

「っ」

何年ぶりかに呼ばれた、彼女の口から発せられた自分の名前。

喉の奥が熱くて、どうにかなりそう。
心臓が痛い。