踊り場で告白された日から3日がたち、終業式が終わった。
あれから、俺がめちゃくちゃひどい振り方をしたと噂されるようになったけど、明日からやっと夏休み。
休みが明ける頃には、みんなそれを忘れてくれているだろうと思うと、そこまで気にすることでもない。
……羽奈に、どう思われているかは、心配だけど。
女子のネットワークってやばいって聞くし。
俺のあのセリフ、一語一句、羽奈の耳にも入ってそう。
いや、盛りに盛られて、数百倍最低な男になってるかも。
放課後、永岡も大江も彼女を作ることができなかったとうなだれながらも、最後の最後まで、クラスの女子に声をかけて、何人かとはグループで遊びに行く約束ができたと喜んでいる。
「四谷も行くか!」
「……俺はいい」
「えぇーつまんねぇーお前がいたら絶対他にも女の子来るのに!」
「頑張れ」
「お前なぁ!イケメン滅びろ!」
大江の声を無視して、教室を出て廊下を歩く。
夏休み……その間に、もし吉川先輩が羽奈に告ったら……。
俺の頭の中はそんなことでいっぱい。でも、何か行動を起こすことなんてできなくて。
中学に上がったタイミングで、俺は、羽奈と一緒だった団地から引っ越してしまったので、
通学路で彼女とばったり会うことなんて、まずない。
こんなに引きずるなんて想像もしてなかった。
いつか自然と、この気持ちが薄れていくと思っていたのに。全然。
つか、数年ぶりに同じクラスになって余計、気になってしかたない。
学校を出ると、一斉に蝉が鳴く声がして、日差しが照りつける。
「あっっつ……」
『ちょ、羽奈、冷たいって!』
『ヒヒッ!』
思い出す。
羽奈との懐かしい日々。
夏の暑い日、公園で思い切り遊んだ後は、親からもらった少ないお小遣いを握りしめて、近くのスーパーで1番安いソーダのアイスキャンディを買った。
羽奈はよく、隙を見て俺の頬にアイスの袋を当ててきて。
俺はよくそれに引っかかって『冷たっ!』と大げさに反応していた。
そうすると、羽奈が楽しそうに笑って。
そのあとは、どちらかの家の浴槽に氷水を張って、足を冷やして水遊びをして。
足で水をかけ合って、また笑い合って。
そんな懐かしいことを思い出しながらバスを降りると、俺の足は、自然とあるところへ向かっていた。