あの夜を思い出す。月雲宵と残業したあの日。僕のミスで月雲宵も、残業する事になってしまった。残業の合間、僕は屋上に出た。しばらくすると月雲宵も屋上に出て来た。ココアを差し入れしてくれた。甘い物が苦手な僕だが、月雲宵のココアならたまに飲んでも良いなと思った。風に吹かれて、夜の空に泳ぎ出す月雲宵の艷やかな髪。きめ細やかな白い肌。全てが美しかった。そして、儚げだった。今にも崩れてしまいそうな、脆いその存在が愛おしかった。思えば後時恋に落ちたのだろう。また、あの夜のように屋上で会えたなら。今宵また会えたならどんなにいいのだろう。