疾風である。
 私を片腕で抱え、本を片腕に抱えるという器用なことをして助けてくれた。

「半分持ってやるよ。行き先一緒だろ」

 爽やかな笑顔で疾風が私の本をほぼ全部奪い取る。途端、手の中が軽くなる。
 よかった。あのままだと私、本をぶちまける所だった。危ない危ない。

「ありがとう、助かるよ疾風」
「別に。明日花も一気に借りすぎだろ。読書は面白いけど」

 呆れた顔でため息をつく疾風。
 ポンと私の頭を撫でてくれて、なんだか恥ずかしい気持ち。

「えへへ、まあね。疾風に読書の面白さを教えてもらったおかげだよ」
「そ。そう言ってもらえると嬉しいね」