「図書館行こう、明日花ちゃん」
「あ、うん」

 可憐ちゃんがいれば、クラスを通る道もそこまで怖くなくなってきた。
 だから、最近は図書館を頻繁に利用している。
 うちの学校の図書館はそこそこ品揃えがいいから、結構居心地がいいんだ。
 ふかふかのソファもあるし。
 授業中は基本誰も生徒は入ってこない。
 とは言っても、保健室の居心地良さとはまた違うのだけど。
 そして、図書館へ向かっていると。

「あっ、ぶりっ子可憐じゃん」
「真由ちゃん」

 いかにも意地悪そうなサラサラの黒髪ロングヘアに、切れ長の吊り目の女の子が可憐ちゃんを睨みつけた。可憐ちゃんは少し怯えた様子で固まっている。
 制服についたバッジを見たところ、可憐ちゃんと同じクラスの女の子らしい。そして、似合わないお化粧が痛々しくて、無理に背伸びした感じがする。
 周りに取り巻きのように気の強そうな女の子たちを侍らせて、嫌な感じを漂わせている。

「ちゃん付けしないでくれる? キモい」
「友達気分なんじゃないの? 真由の」
「うわ、ウザッ。しつこいんですけどー」

 ゲラゲラと下品に笑う女の子たち。
 ガムを踏みつけたかのようのなネチネチした粘(ねば)っこさのある視線。
 査定するような、上からなその集団の目。
 三日月をひっくり返したような釣り上がった口。怖い。