大人はいいなぁ。行きたい場所に行けて。ひとり自分の意思で、田舎に残ることもできたんだろうなあ。(うらや)ましい。はあ。
 今の学校には、私の居場所なんかどこにもない。でもあっちに戻っても、新しい中学校には他の場所の小学校から来る子も一緒に入るから。
 どっちみち今(さら)あっちにも私の居場所はやっぱりないんだろうなあ。新しい学校に、村のみんなと一緒に進学したかった。 それが普通でありきたりだった、あの仲良しだらけの日常が今は恋しい。
 パパを(うら)んでも意味がないってわかっている。もう私は子供じゃないし。生活するためには仕事が必要だって、それぐらい割り切れる。それでも、友達の縁まで切れてしまうなんて。
 人間関係ってそんなにもドライなんだって。知りたくなかったな。私はまだ中学生なのに。

「明日花。そういえば、こっちでもそろそろ沢山(たくさん)友達できた?」

 ママがニコニコしながら聞いてくる。

「うん! もちろん友達沢山できたよ!」

 反射的に、私はつい嘘をつく。
 言えるわけないじゃん。いじめられかけている、浮いている、なんて事実。それも両親が大好きな生まれ育った田舎ネタで!
 私にだってプライドがある。だって、そんなの私が人見知りで、甘えているって言っているようなもんじゃん。
 実際どうであれ、結局大人も周りもそう受け取るんでしょ。違うから。勇気が出せない、ただそれだけで。頑張れば私にだってすぐ友達ができるはず……と思いはするけれど、やっぱり怖いんだもん。

「今度お友達を家に連れてきていいのよ?」
「わかったよ、ママ」