「別に無理してないけど?」
「えっと」

 私が無理やり作ったキョトンとした顔で、疾風が言う。
 なので稔が反応に困ってポカンとする。
 動揺した疾風は、つま先で保健室の床をトントンと叩いて誤魔化している。

「最近、疾風ってば顔色悪いだろ」
「そんなことないって、稔。ほら、原稿やれよ」
「えっ、と」
「ほらほらほら。稔の神絵見たいな、俺」
「! そう!? 僕の絵、神?」
「うんうん、神神超越神絵師」

 さすがに疾風にグイグイと背中を押されては、体格差のせいでどうにもならない稔。
 おまけに調子に乗るような発言で煽られまでして。

 単純な稔は当然のように、されるがままになり机の前に座らされ、ペンを握らされる。すると。

「それにさ」

 疾風が原稿用紙を見つめながら、ボソッと笑顔で呟いた。

「このままじゃダメだ。立ち止まったままじゃ、前へ進めないよ。俺たち」

 と。

***