「にいちゃん! 疾風にいちゃん!」
私が疾風にそう尋ねたところで疾風に声がかかった。
小さな女の子と男の子。双子だろうか。すごく目が大きくて元気そうだ。
それに少し地味だけれど、綺麗なお母さんはどこか疾風に似ていた。
「こら、ダメでしょう。お兄ちゃんは学校のお友達と一緒なんだから」
「お袋、迎え今日行けたのか?」
「ええ。今日だけはなんとか、だから放課後気にしなくていいからね、疾風」
「悪い、俺それぐらいするべきなのに」
「いいのよ。お兄ちゃんにはいつも色々してばかりで。じゃあ、ふたりともごゆっくりね」
そう言って、疾風のお母さんは小さな二人を引っ張って消えてしまった。
颯が穏やかな顔でため息をつく。
「俺んちさ、ああでさ」
「ああ?」
「父さんがふたりが生まれたぐらいに死んでいないんだ。で、下もああだから。自然と、な」
「なるほど」
「せめて俺がしっかりして、みんなを守ってやらないと」
「カッコいいね。疾風は。つらいことは私にも吐き出していいからね」
保健室の、みんなのお兄ちゃん疾風は、清々しいぐらいに根っからのお兄ちゃんだった。