「本当、村に戻りたいわあ、だるいげん。はあ」
私はつい方言まじりに、独り言を呟く。すると。
「ねぇ、明日花。洗濯物乾いたわよ」
「ありがとう、ママ」
「明日花、相変わらず地味な服しか着ないのねぇ。ママに似て」
「だって、オシャレあんまり興味ないんだもん。こっちの子はみんなオシャレだけれど」
本当はね、興味はあるんだけれど。
でも、オシャレがしたいなんてワガママ言えるほど、私は学校で頑張れていない。
なんとなく都会に似合う可愛い服が欲しいとか、後ろめたくて。
それすら言えない自分はまるで家の中でも作り物の明日花みたいで息が詰まりそうだ。
あの村では私はいつでも自然体でいられたのに。ここでは色んな意味で着飾らないといけない。
学校でも家でも、明日花というイメージに沿う私でいなければいけない気がする。
それが正直すごく息苦しい。
「そういえば、私宛にあっちの村の子から手紙来てない?」
「そんなの一通も来ていないわよ? 忙しいんじゃない?」
「ふぅん」
また、か。最近ずっと文通の返事が来ない。あんなに毎日でも手紙を出すって言ってくれていたのに。はあ。心底ガッカリした。
あの子たちにとっては私なんか、いなくなって数か月で興味がなくなる存在なんだ。
中学に入学するまで、ずっと一緒にいたくせに。私が引っ越してから、まだたった数か月しか、経ってないじゃん。
そりゃね。人見知り丸出しな私も悪いと思うけれど。パパの転勤でいきなり都会に行くなんて、子供の私には予想も反抗もできないんだからね。