「キャハハ」
「可憐うるさい!」
「稔だって、顔が笑ってんじゃん。はい、稔が次は鬼!」
「くそ、油断させるなよ!」
「仕方がないじゃん。鬼ごっこなんだから」

 保健室の先生がいないから、調子に乗って私たちは保健室で鬼ごっこをしていた。
 特に可憐ちゃんが大はしゃぎで、長い髪をひるがえして走り回る。
 こういう時は小柄でいいな。小柄だからこそある種のゲームでは逃げが最強だったりするし。
 ふと私が笑顔で二人を見ていると。

「明日花、危ない!」
「きゃっ」

 一方大柄ゆえに逃げるのに失敗した疾風が私に(おお)い被さってきた。
 長い腕が私の肩の上を通過して壁に寄りかかる。近距離でゼエゼエと熱い息が頭上から降りかかるからすごくドキドキする。
 伏せ目気味の色っぽい目に長いまつげに、一滴私の肩に落ちる汗。
 なんだかいつもより疾風を近くに感じる。
 いや、実際近いんだけど。
 どことなく、男の子らしい匂いもするような。