そりゃ空気は壊すし、関わりにくいだろうけど正義は可憐ちゃんじゃん。
 この世界って理不尽なことばかり。

「あ、でも。ふたりの事は聞かなかったことにしてね。地雷を避けるために告げ口したけど、本来は本人の口から聞くべき内容だと思うし」
「うん。わかったよ可憐ちゃん」

 そりゃそうだよね。秘密は、本人から聞くべきだ。他人から聞くべきじゃない。

「ふたりもプライドがあるから。あたしたちと同じように」
「そうだね。プライド、かぁ」
「だからここにいるんだよ、あたしたち」

 可憐ちゃんはキッパリと言う。私はおしだまる。

「大勢の前で、(さら)されながら嫌がらせされたり泣いたり、制服汚されるの嫌だもん。あたし」
「可憐ちゃん」

 制服を汚される、なんて。サラリと言うけれど、可憐ちゃんへのいじめってハードだよね。私なんか甘いんじゃ、と思うとなんだか 微妙な気持ちになる。
 私、やっぱり甘ったれてるのかなあ。私にとってはあの頃は本当につらくて。
 教室へ行くのは、今でも怖くて。
 つらさに上下はないと私はわかっていても、どうしても比べてしまう。
 不幸くらべなんかしても意味ないし、どっちが強いとかないって知ってるくせに。

 自分は不幸だから、こうしても悪くないって正当化を私はどこかで望んでいるのだろう。