「ゲームみたいにただ寝て起きていたら選択肢が増えるなんてことはないんだよ。明日花ちゃん」
「そうやけど」

 だけれど私は。今の状態の維持で精一杯で、前に進んでる人を羨ましがりながら、自分を正当化して生きている。
 だって、怖いもん。
 前へ行くの。何かにぶつかるの、すごく怖いもん。

「まだ中学一年生って言い訳、あたしもすぐ思うけど。教室へ行かないと日々あっという間だから」
「……可憐ちゃん。同じクラスに可憐ちゃんがいればよかったのになあ」
「仕方がないよ。ここそれなりにマンモス校だし、生徒多すぎてみんな仲良しと離れ離れだもん。明日花ちゃんだけじゃないよ。あたしは元々親友とかいないけどさ」
「そっか」
「たられば言っても、どうにもならないし、今をがんばろ」
「うん、可憐ちゃん」

 私だけじゃない。
 そう言われると胸がズキンとする。私だけ、と言う特別な言い訳が使えないからだ。わかってる。 
 私だけ、なんてもの世界にひとつもないことぐらい、もう中学生だから本当は私だって、わかってるよ。
 でも。

 私の気持ちは、私だけしか、本当にはわからないし。
 みんなに見えるのは表向きの私であって、内面の私じゃない。

 だからこそ。私は嘘をついてしまうのだろう。けれど可憐ちゃんには、本音を言いたいって思った。