ふう。

 あれ。おかしいな。ここはどこだろう? まぶたが()け物石のように重くて目が開けない。体もだるい。
でも、懐かしい雰囲気(ふんいき)がして、その重いまぶたをゆっくり開いた。すると。

「大丈夫? 明日花(あすか)

 そこには、村のみんなが私の前に群がっていて。

「みんな?」

 ニコ、と(やわ)らかにみんなはほほ笑んで私を見る。そしてギュッと抱きついてくる。

「明日花! こっちに来てよ」
「いや、明日花はこっちだ」
「やだーうちも明日花と遊びたい!」
「明日花! 明日花!」

 まるで花いちもんめで遊ぶようにみんなで私を取り合う。
 背後に見えるのは森。入ったら出てこられなくなりそうな、深い森。綺麗(きれい)な音楽まで聴こえる。おかしいなあ。聴こえるはずないのに、オーケストラのような音楽が聴こえる。   
 揺れる森林を周りにみんなで踊り出す。まるでお祭りのよう。村の人全員集まって大勢で、大はしゃぎしたっけなぁ。

「はあ、村にいた頃に戻りたい、会いたいよーぉ! 寂しいよぉ! みんなぁ。ここじゃ誰も明日花なんて名前で呼んでくれないし」
「明日花は明日花だよ。みんなの人気者だよ」
「本当私、泣きたいよ」
「泣かないで、明日花。うちらだって寂しいんだから」
「嘘だぁ」
「本当だって」

 みんなが笑顔で私を見て揺れる。つられてユラユラする視界の中、私は目覚めた。