「保健室の先せーい! 指を怪我しちゃった。絆創膏(ばんそうこう)下さい!」

 いつものメンバーじゃない普通の女子生徒が来るたびに私たちは空気になる。息を押し殺して、いなかったフリをする。
 堂々としていればいいのはわかるのに、なぜだか後ろめたくて、みんなで隠れてしまう。
 ベッドの下やカーテンの裏に、まるで見られてまずいものになったかのように、気配を消して。

「はいはい。絆創膏ね」
「痛いよー」

 女子生徒はそう言いながら笑う。
 そして校庭に残るクラスメイトをチラチラ見た。
 数か月前までは私たちもあの場所に入れた。堂々と保健室に入って、すぐに教室へ戻れた。
 そう思うと少し胃が締め付けるように痛くなった。

「今度からは怪我に気をつけるのよー! お大事に」

 私たちに向けるのと同じ笑顔で、保健室の先生はその子にも笑いかける。

「はーい、ありがとうございました! 先生!」

 無邪気な声が、正直怖い。彼女たちが気まぐれに私たちを見つけて、指を差して笑ってこないかなんて、被害妄想を考えてしまうから。

 って……疾風、近い! 近い!
 私の横にベッタリ隠れる疾風に、私はドキドキする。いつもなら嫌な時間が、なんだか特別なものに思えた。
 たまに、この隠れんぼもどきで味わえる、ドキドキの共有が楽しく思えるのは私だけの秘密だったりする。
 扉の閉まる音がして、私たちはそっと顔を出す。そしてみんなでため息をつく。よし。これで元の私たちに戻れる。