よろけていると、スッと体を持ち上げられた。
「ひゃっ」
これってお姫様抱っこじゃん。
おんぶよりも、もっともっと恥ずかしいやつ。赤面待ったなし! 鼻血スタンバイ!!
「離、して」
「女の子が具合悪そうなの、放置できないタイプなんで」
真顔で、少し怒った顔の正義感溢れたカッコいい疾風。
う、この顔、すごく拒否しにくい。
「ええ、でも」
「ほら。もっと具合悪くなったらみんなが来るし、更に悪目立ちするよ?」
「ぐっ」
確かにそりゃそうだ。
困った。もう疾風からは逃げられない。そもそもスポーツマンで力がある疾風から、逃れられるわけがない。
無理だ。諦めよう。
でも。やっぱり疾風って、カッコいいなあ。
顔だけじゃない、体格も声も、性格も。カッコいい。
誰もいない授業中の廊下を、二人進む。唐突に顔を上げれば、疾風の顔のドアップ。近い。やばい。すごくドキドキする。
意外と長いまつ毛とか、肌も結構綺麗だとか、どうでもいいことが目につく。