休み時間。
 みんなでトランプをして盛り上がる。保健室の先生が()れた麦茶を飲みながら、ワイワイ。
 もう初夏だし、喉が良く渇く。
 セミの鳴き声だってそろそろ聴こえてきそうだ。

「わーい勝った! 稔の負け!」
「うるさい可憐っ。もう一度!」
「やーだ。稔弱いからもう明日花ちゃんも疾風も抜けちゃったじゃん。トランプ」
「今日の僕の運がないだけだってば! 僕は強い!」
「いつも負けてるのは顔芸のせいだっていい加減気づいたら?」
「えっ!? 嘘!?」
「本当。今もすごい面白い顔してるよ。稔」

 ワチャワチャと稔と可憐ちゃんがじゃれている。
 私は疾風に借りた文庫本を読んで、ぼんやりと妄想に浸っていた。
 私もこんな恋愛したいなあ。はあ。
 中学生で謎解きしながら恋愛するその小説は、疾風は恋愛をオマケ程度にしか考えて読んでないのが丸わかりである。
 私とは真逆すぎる。

 私はカッコいいヒーローを、ひっそりと疾風と重ねて読んでいるのに。
 ヒーローは正義感が強いところが、疾風によく似ていると思う。
 少し肌が黒くて背が高いのも。なーんてお花畑な私の脳内。

「ふう」

 ちなみに疾風も、何かファンタジー小説を読んでいるようだった。
 それにしても、疾風はたくさん本を持ってるなあ。
 どこを怪我したかわからないけれど、入院中とかに買ったのかな? 多分。

 今は普通に動き回れてるように見えるけど、サッカー部やクラスには戻れないのは理由があるんだろうな。
 だけれど怪我は見えない所にあるだけで、完治してないのかもしれない。
 そこは個人の事情だ。