「次のページ、次のページ」
私は急かすように言う。
遠回しに、私はクラスメイトに早く去ってほしいと促(うなが)す。
正直私はよく知らないクラスメイトと何を話していいかわからなくて、心臓がバクバクする。
何度も目を泳がせながら私は張り付けた笑顔を作り続けた。
「あ、そうだよね! ごめん、ごめん! お邪魔しました!」
ニコニコして、その場任せの言葉を真に受けて去っていくクラスメイトに、ため息。
正直中身なんか読んでいない。人目を誤魔化すための壁代わりの文庫本だった。
あーあ。ここでこの本が好きだったりすれば、この子と友達になれたのかなあ。なんて。そんな時。
「ねぇ、小花さんやっぱ読書していないわ。あの作品、女の子同士の友情ものだし」
「えー。そう言うの、陰キャっぽい」
「わかる。引くよね」
「なんかわざとらしくさー私―忙しいんですーぅって感じがダサ」
「あはははは」