「えっと、わ、私は……」

 私も言わなきゃ、と思い言葉が喉に詰まる。そして俯く。すると私の手を疾風が軽く(ふさ)いだ。

「無理に言わなくていいから。言える日が来たら、教えて」
「疾風」

 まっすぐに私をみんなが見る。そして疾風は手を差し出して言った。

「それに、勉強とかなんでも教えられることなら俺、教えるし」
「でも、疾風に手間を」
「俺の自己満足。誰かに何かをしてあげることで、自己否定を(やわ)らげているの。つまり、自分のダメな行為への言い訳として明日花の世話をしてる」
「えっ?」
「だから、気にしないで。エゴってやつだから」

 疾風の目が笑っていない。

「……?」

 なんとなく闇を感じながら、私は静かに頷く。
 疾風なりに考えることがあるのだろうけど。私は疾風の手を握る。
 すると疾風も握り返してきた。