私だけ、教科書を授業通りに開いていた。肩が()るような生活だけれど、ここは学校だから。そう思っていたから。
すると保健室の先生が私の肩を叩いた。

「明日花さん、そんなに無理しなくていいのよ?」

 そこで私は、無理に背伸びしていたことに気づいた。
 都会の慣れない学校で、周りに追いつこうとして、気を張っていたのだ。
 そりゃあ、見た目は元からの小花明日花のまんまではあったけれど。内心はあか抜けなきゃとか、今風の話題を理解しなきゃって頭の中では思ってたし。
 焦り、怯え、緊張。たくさんの苦しい負の感情に押し潰されそうだった。

「でもぉ」

 思わず気の抜けたため息を吐きながらワークをする。教室へ行かないからって、勉強はサボりたくないからね。私はみんなみたいに一芸なんかないし。いずれは教室に戻りたいし、高校にも進みたいから。

「まあ、明日花さんのしたいようにすれば良いわ」
「先生……」