「!? 漫画、描いてるんですか!?」
「ああ。当然。僕は漫画家だからね」

 そう言えばそう言っていたっけ。忘れていた。
 でも、学生漫画家って凄い。相当才能があるんだなぁ。
 なんか病んだ感じの絵ではあるけれど、迫力満点。書き込み量も満点。繊細(せんさい)な世界観に見惚(みほ)れる。

「すごーい! 天才!」
「そうだろ。そうだろ。もっと褒めればいいよ。サインぐらいあげるから」

 珍しく大きな声で稔は高笑いしながら言った。
 原稿も私に見えるように広げてくれる。やばい。すごい上手い。これがプロの画力か。

「欲しい! 今度単行本買います!」
「ふふふ。明日花は素直だね。他の愚民(ぐみん)と違って」

 愚民って。誰のことだろうか。まあ、触れないことにする。

「オイ、稔。お前まだデビュー作以外掲載されてないだろ」
「うるさいな! 疾風! 余計なこと吹き込むな」
「事実だろ」
「雑誌に特集組まれたからって調子乗るなよ! 疾風!」
「そんなの昔の話だ! それに! 調子には乗ってねぇ!」

 ふたりのやりとりに私は呆然とする。何これ、ここのみんなって全員一芸持ち?
 私だけ? 何もないの。すごすぎない??
 私はポカンと口を開けたままふたりを見つめる。