「あたしも最初、やらかしたよ、明日花ちゃん」
「可憐ちゃん」
「後ろめたいよね。トイレ行くの。給食だって、自分じゃ取りにいけないもん、あたし」
「そう、なの?」
「明日花ちゃんだけじゃないよ。大丈夫」
可愛く笑う可憐ちゃんに安堵する。
そうなんだ。
私だけじゃないんだ。よかった。
「でもね、あたしたちは悪くないんだから、堂々としてればいいんだよ」
「可憐ちゃん、でも」
「わかってるよ。あたしも理屈でわかってるだけ。出来ないもん」
悔しそうに、可憐ちゃんは表情を歪める。
どこか遠くを見る瞳は、心底悔しそうだった。
「あたしたちは、悪く、ないのに、ね」
ボソリと可憐ちゃんは、涙まじりの声でそう呟いた。そして、奥の方へ消えていった。
私は着替えて、ソワソワとみんなの所へ戻ると、誰も気にしないふりをしてくれて文庫本の続きを読み直すことできた。