教室に行けなくなった私たちが再び歩き出すまで

「明日花」

 疾風の声がして振り返る。
 桜の花びらが舞い散る中。
 そこには保健室の前に疾風が立っていた。

「なんで、ここに」
「待てなくて。会いたかった。明日花」

 疾風は露骨に私に抱きつく。

「きゃっ、学校内でキスしないでよ」

 しかも口に! さすがにないよ、それは。遠征ばかりで寂しかったのはわかるけれど。

「あはは、誰も見てないって」

 からりと笑っていう疾風を小突く。それでも疾風は笑い続ける。
 
「そういう問題じゃない!」

 大型犬のようにじゃれてくる疾風に私は真っ赤になっていると思う。やめてよね。もう。
 恥ずかしいんだから。
 あれから疾風は身長もまた伸びて男らしくなった。

 焼けた肌はやっぱりそのままに、色気も加わってタチが悪い。
 はあ。ドキドキしすぎて一緒にいると死にそうになるよ。
 家にいる時は美味しい料理まで作ってくれるし、いい旦那さんだと思う。
 遠征が多くて寂しいのは私もなんだけれど、しょうがないよね。
 お互いの夢を無事叶えたのだから……。