教室に行けなくなった私たちが再び歩き出すまで

「本当に先生はいいな。人気サッカー選手のお嫁さんで。しかもイケメンでしょ? 広瀬選手って。いいなーいいなー」

 女子生徒が目を輝かせて私に言う。
 正直自分でもまだ体感が湧かない。私なんかと疾風が、って気持ちの方が強い。

「あはは。あなただってどうなるかわかんないよ? まだ若いし、未来は無限大だよ」

 そう。みんな夢を叶えた。
 私も含め、頑張りを報告しあっては努力を続けた私たちは、痛みを知っているからこそ全力で青春を走り抜けたのだ。
 保健室の先生は楽しいだけじゃない。

 当然今も保健室登校の子が、カーテンの後ろに隠れている。
 みんな思春期が故に悩んで、キリキリと痛む気持ちと戦っている。
 少しでも私が力になっていればいいのだけれど……やっぱりまだ新米だから、自信がない。
 これからも頑張っていかないと。

 はあ。