教室に行けなくなった私たちが再び歩き出すまで


「はあ……」

 広くて遠い空を見上げて、スゥーと深呼吸しながら私は思う。
 いじめや不登校って、他人事(ひとごと)だとずっと思って生きてきた。
 だけれど、私は気が付けば当事者になっていた。

 全然他人事じゃない、近くて深くて重い問題だった。
 そりゃね、そうなったからこそ今があって、得られたものもあるけれど。

 初めてそうなった時はつらくて絶望した。
 誰もわかってくれない、死にたい。
 もう嫌だ。強くそう思った。
 消える事を何度も願って泣いた。
 だから。私はそういう子たちの支えになれる大人になりたい。寄り添って、笑い合って、元気をあげる理解者でありたい。
 例えば花野先生のような……優しく見守れる保健室の先生になりたい。
 誰だって、いつ幸せから爪弾きされてしまうかわからないこの世界で、変わらず誰もを待っていてくれる。
 そんな優しい居場所でありたい。
 いつでも泣きながら縋りつける、そんな存在でいたい。