たとえば、私の場合は引越しで友達を失うという経験をしたし。
 別れはとてもつらくきつい事だけれど、それがあったからこそ気づけた事もある。
 たとえば、一期一会的な人間関係の大切さだとか。
 いつだって人間は常に一緒にいられるわけじゃないのだ。

「明日花って名前をつけてよかった」
「どんな由来だっけ、ママ」

 可愛い響きで気に入って入る名前だけれど……。

「小花って苗字とあえてくっつけて、小さな花が明日咲きますようにって意味よ。ささやかな幸せを噛み締められる子にしたかったの。名前負けにならなくてよかった。まあ、苗字は変わっても『花』って漢字は持って行ってほしかたから、あえて苗字にもある『花』を名前にも入れたのよ」
「明日花って、そんな素敵な由来があったんだ。つけてくれてありがとう。パパ、ママ」
「ううん、産まれてくれて、生きて、頑張ってくれて本当にこちらこそありがとうよ」
「ああ、明日花が生まれてくれてよかったとパパも思うよ」

 両親は私を抱きしめてくれた。なんとなく照れくさいけれど、涙が出た。
 私はきっと耳まで赤いに違いない。だって、恥ずかしいんだもん。
 仕方がないじゃん。でもその顔を隠す気にはなれないんだ。
 だってパパもママも顔が赤いから。似たもの家族だね。

「こちらこそ、いつもありがとう。産んでくれてありがとう。大好きだよ、パパ、ママ」

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