「明日花。本当最近頑張っているな。えらいぞ」
「パパ、ただいま」
「おかえり明日花。さあ早く上がって」
家に帰ってくるなり、珍しくパパが話しかけてきた。
今日は早く仕事が終わったんだろう。手にはケーキを持っている。
何事。
別に何かお祝いの日じゃないんだけれど……謎。
「そうね。明日花は色々頑張っているわ。さすがママたちの娘ね」
「ママ」
「明日花のおかげで、当たり前の毎日のありがたみを再確認したわ。仕事に行ける、学校に行ける、それだけですごく大変で素晴らしい事なのよ」
「どうしたの、大袈裟」
「大袈裟じゃないわよ、明日花。明日花が教室にまた行ってくれてママたちは感激しているの。すごく嬉しいわ。つらかったのに、気づけなくて本当にごめんなさい。愛しているのに」
「そんな、照れる」
愛しているだなんて……歯が浮きそうな台詞。でも、嬉しいなあ。
人間って何かを失う事でそうであることの大変さを知る。
それは生きて生きて少しずつわかり始めた事。