「雅彦。あなたA中学校に転校よ」
「は!? あのスパルタ私立!?」
「こんな恥ずかしいいじめをするようなバカ息子を公立に通わせてられるものですか! 本当にみんなさんごめんなさいね。私の教育が甘かったばかりに」
「甘くねぇよ! 今だって十分スパルタだから!」
「心に届かなければまだまだよ。それに、さっきいじめに参加してたのは、確か……中川さん、阿曽(あそ)君、千田(せんだ)さん、それに……まあ、いいわ。全員私から保護者の方に報告しておくわね」

 顔を見ては名前をスマホに書き留めるPTA会長。
 ヒィ、とクラスメイトが悲鳴をあげる。

「樋口君、よね。後。小花さんに委員長さん。よく頑張ったわね。私の息子もあなたたちのようなまっすぐな子になれるように頑張るわ」

 PTA会長はそう言って優しく笑った。
 それは、怒っている時とはまったく違う、聖母の微笑みだった。

「いえ! 本当の事しか言ってないので。どんな人間にも自由に生きる権利はあって、それを踏みにじるのはいけないと思うんです。それに、私と樋口君は友達だから、友達は支え合いが当たり前だと思うんですよ」
「小花さんの言うとおりね。では、また廊下で会ったら気にせずスルーして頂戴。雅彦! 行くわよ!」
「ヒィ」

 その後本当に雅彦は転校して行ってしまって、いじめはなくなった。
 他のクラスにもこの事件は当然影響があり、学校はかなり平和になった。


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