さすがに声を出してきた可憐ちゃんは、呆れた顔で私たちを見ていた。
「そういえば、明日花。吐き気は?」
「もうスッキリ。本当ごめんなさい、疾風先輩」
「いいよ。俺、もっと普段は制服を汚してたし」
疾風先輩は一応サッカー部だからか。でも、どこか過去形っぽいのが気になる。もしかして、今はサッカー部じゃないのかな。でも、三年生だし、受験最優先なのかなあ。うーん。私は一年生だから、よくわかんないんだけれど。
「気にするなよ、明日花」
「ありがとう。疾風先輩」
「明日花の方は汚れてない?」
「疾風先輩のおかげで、まったく」
「それはよかった」
優しいなあ。疾風先輩。私なら、こんなこと絶対しないしできない。
そしてさらに思い出す。疾風先輩、よく校庭にいたなって。サッカー部だから、そりゃそうだよね。やっぱり遠目にかっこいいなって思ってたけど、名前が分かって、こんなに近くに来れて。
他の女の子からしたら、羨ましいんだろうなあ。こんな事件でなければ、きっと。
やっぱり三年生の先輩って大人っぽい。一年生の同級生とは大違いだ。背も高いし声も低いし、何より落ち着きがある。かっこいいなぁ。