ただの中学一年生でしかない私ができる事。それは些細なことしかないけれど。
 それでも、今手が届く範囲での事でできることをしていきたいと思った。
 ぼんやりと授業を受けながら、担任の岡崎先生をジッと見る。

「岡崎先生そこ間違ってるー」
「おー、ごめんなー?」
「教えてあげたしジュース(おご)ってよ」
「コラコラ、調子に乗るな。次のとこ行くぞー」
「えー、ケチー」

 岡崎先生は何も知らずに、クラスのカーストの高い生徒とわいわいと楽しげに授業を進行している。
 いじめっ子は器用に先生の前で明るく気さくで善良な生徒を演じるのが得意だ。
 それに戸惑ったのは私だけらしい。
 みんなどころかひいやすらそれを受け入れて先生の前ではいじめっ子と仲良く過ごしていた。人間って怖い。
 私は戸惑いながらニコニコ笑ういじめっ子を見て、彼らにも彼らの人生があるんだろうなと考える。

 いじめっ子にも両親や友達がいていとこやおじいちゃんおばあちゃんもいて。
 失いたくない大切なものがあって、秘密だって当然ある。それなのに。
 いや、それだから。

 自分を守るためにいじめをするしかない人も中にはいるのだろう。
 それは間違っていると思う。すごく間違っているし最低だと思う。
 だから私はぶち壊す。自分の力で、できる限りぶち壊す。

「ふう」

 思わず大きなため息が出る。