「おい! お前美形だな!」
「スゲー、まつ毛バサバサ。昔の少女漫画みたいな美形じゃん」

 素顔がさらけ出しにされた稔は顔を隠そうとする。
 そんな時、稔をクラスメイトの美少女の目がハートになったのを私は見逃さなかった。
 あーあ。惚れられちゃったよ。そしてその美少女が稔に歩み寄るのを確認して私は稔のクラスに背を向けた。
 これ以上見てられないや。
 うん。恥ずかしすぎるし刺激が強い予感!!

「稔は大丈夫、っと」

 そして私は階段を降りていく。
 先輩たちがあちらこちらにいて、大人っぽい雰囲気を振りまいている。
 なんか、もうすでに高校生でもおかしくない見た目の人も多い。
 そういえば、疾風もそうだなぁ。
 背が高いせいかすごく大人っぽい。表情は親しみがあってすごく無邪気だけれど。

「あとは疾風か」

 そう呟きながら正直足がすくむ。見たくない、と思った。悲しんでいる疾風の様子は見たくない。怖い。
 疾風の教室に行かなければ夢を見れる。疾風が人気者の元の位置で笑顔でいる夢を。
 だけれど、それはなんか違う気がする。
 友達なら、事実を認識してどこかで協力しあったりするべきだ。妄想で片付けるのは違うと思う。
 ゆっくり足を動かし疾風の教室へ向かい、私はその場で足を止めた。
 疾風、どうしているのかなぁ。笑っているかな、泣いているかな。ああ。見に行くのが怖い。

「あ……」